「いじめ」を考える
「いじめ問題と どう向き合うか」
尾木 直樹 著
岩波ブックレット№695
2007年3月7日 発行

最近の「いじめ問題」について、わかりやすく解説された本です。
「いじめは加害者が100%悪い、たとえ被害者に問題はあったとしても、個人の人権は尊重されなければならない」という尾木氏の主張が本書の中で貫かれています。
近年の思春期(小学生高学年から高校生あたり)におけるいじめ問題は、被害者が時には加害者になったり、携帯電話の普及によりメールによる攻撃が頻繁に行われるなど、大人からは見えにくい実態があります。
いじめが原因による自殺の事実を隠蔽する文部科学省・教育委員会・学校関係者たちの姿勢は、市民だけでなく、子どもたちからも強い不信と絶望感を抱かせています。文科省大臣宛に子どもたちからの自殺予告の手紙が次々と送られたケースがこれを裏づけています。
組織としての管理体制が強化されつつあり、「教育再生会議」でも教師に対する過大な要求が高くなり、息苦しさが高まりつつある学校社会がいじめの根本的な原因のひとつであり、解決するのはかなり困難と言えるでしょう。例えば、いじめの根絶のために「いじめ件数半減」「不登校ゼロ」などと、すぐに数値的な目標が上から押しつけられているのが現状です。これが教師の人間としての感性とゆとりを奪い、逆にいじめを助長してしまうこともあるのです。
また、親の立場からの「いじめ」の予兆を見つけるための努力が求められます。いじめられている子どもは、必ず何かしらの兆候を示し、自殺も事前にサインが出ていると言われています。それを見逃さないための親の目が求められます。何でも学校の責任にして、糾弾するだけでは何の解決にもなりません。
また、私が保育園の保護者の方々と話していて一番気になることは、「小学校に入ったらいじめられないか心配です」と言う方は圧倒的に多いのですが、「いじめの加害者にならないか心配です」と言う方は皆無ということです。いじめの現実は、ひとり子が被害者にも加害者にもなる可能性が高く、昔のように非行に走る子だけが加害者という時代ではありません。いじめられないために加害者側に加わったり、傍観してしまう子はたくさんいるのです。そのことを私たちはもっと自覚しないといけないでしょう。
尾木氏があげる「いじめをする時期の加害者イメージ」として
- わがまま
- 自分がない
- すぐにむかつく
- かっこつけたがる
- リーダー
- 目立ちたがりや
- 先生や上級生にうけがよい
- 言葉が達者
- 無責任で積極的
- 明るい
この中で「リーダー」や「先生や上級生にうけがよい」「明るい」などは、一般的に良いイメージであり、いじめの加害者とは無縁のように思われるかもしれません。しかし、私が保育園の子どもたちの関係を見ていても、どの子どもでもいじめる側に加担してしまう可能性は否定できません。
反対にいじめを受けることを防止する方法は、ほとんどないと言っていいでしょう。何が原因でいじめが始まるか、誰にもわからないことなのです。したがって、いじめられる子どもを励ましたり、元気づけることよりも、いじめる子を生み出さない生活環境が絶対的に必要なのです。
いじめはなくすことはできない。これだけは言いたくないところです。
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