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「地球へ…」(テラへ…)

「地球へ…」(テラへ…)

「地球へ…」(テラへ…)

竹宮 恵子 作

1995年1月

中公文庫コミック版

この作品は、1977年に「月刊マンガ少年」に連載されたもので、今年で30周年ということになります。

西暦3000年代、地球の環境は著しく荒廃し、人類は地球を破棄して、遠くスペース・コロニーに移住します。恒星間航行(ワープ航法)が行なわれ、人類は銀河系を制覇します。そして「人類は完璧に平等に地球を失った」状態下で、ユニバーサル・コントロールが特殊政府体制という生命管理を完全に行なう社会体制を作り出します。堕落、腐敗する一方の人類社会を救うために作られたこの統治体制とは、大人社会と子ども育成社会とを切り離した政治体制で、子どもは婚姻ではなくコンピューター・コントロールによって人工的に作られ、「アタラクシア」という名の幼年育英都市で保父・保母によって育てられます。14歳になった誕生日に成人検査を受け、選別されて、合格した優秀な子はさらに高等教育を受けて、エリートとして重要なポストに配属されます。そして残りは一般の市民社会を構成されます。仕事もすべてコンピューターによって適正とされたものにつくことが義務づけられています―このような壮大壮絶な設定の未来社会が舞台です。

ストーリーは統制下の人類と、少数ながら異種として誕生した「ミュウ」―新人類との戦いを描いています。(この作品が初めてかどうかはわかりませんが、機動戦士ガンダムに登場する新人類「ニュータイプ」などの設定は、すでにあったわけです)

純粋培養のような教育、優秀かそうでないかを選別する検査、ダメなものは抹殺していくという徹底したエリート・メンバー育成の管理統制社会。そしてそれを外圧から守る防衛軍。この体制を維持していくには、違反者や不穏分子、不適格者を差別し、除外していく監視弾圧社会へと化していきます。

検査から脱落した者たちは、身体の不自由さや障碍を乗り越えて、迫害・抹殺から身を守るためにエスパーへと進化して行きます。これが新人類「ミュウ」なのです。ミュウたちはテレパシーによって人類に呼びかけ、忘れてしまった遠い人類の記憶を呼び覚まし、管理体制からの脱却を呼びかけます。遺伝子操作による誕生、画一化された教育、人間の選別、自己主張するものに対する批判、同じ顔をしていないと気がすまない同規格品化、弱い者に対する差別と迫害…

ミュウとして生きる少年たちの目覚めと苦悩と葛藤と、その生と死とは、こういう状況から生まれています。そしてまだ見ぬ故郷・地球(テラ―ラテン語)への道を歩み始めます。

何世紀にもわたる壮大な物語は、今あらためて読み返しても新鮮なメッセージを私たちに投げかけてくれます。

現実の地球は、環境破壊が進み、遠からず人類の生存は脅かされるときが来るでしょう。また身近では、社会をより良くするために、思想や社会体制を上に立つ一握りの人々によって統制管理する方向にゆっくりと歩み始めています。その危険な道に多くの人は気がつかず、安楽のまま偽りの平和を求めています。しかも、本当に危機となる事態は何世代も後に来ることが、今の私たちには実感がなく、責任を取ろうともしないことが、大きな問題なのではないでしょうか。

「地球へ…」は、連載後、アニメーション映画として公開されました。たかがマンガかもしれませんが、21世紀に生きる私たちへの警鐘のメッセージかもしれません。

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時には隣の人間のポケットの中も気になるもので。チョイト覗かせてもらいますと。 [続きを読む]

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